2016-03-04 23:29 | カテゴリ:映画レビュー
さきほどまで、BS放送の7チャンネルで放送されていたジョン・ウェインの映画「マックQ」を見ていた。
この映画についての詳細はググっていただくとして、一言で言えば、現代のシアトルを舞台として、警察内部で起こった麻薬横流し事件に巻き込まれた主人公が、濡れ衣を晴らすために行動する姿を描くものである。

ジョン・ウェインといえば、説明するまでもなく往年の西部劇における名俳優・大スターとして有名だ。
もちろん本国アメリカは言うに及ばず、日本でも相当に有名な俳優なので、おそらく、皆さんも実際に彼がどんな映画に出ていたということは分からないまでも、どういう風貌の人なのかということは容易に連想できるのではないだろうか。
よくわかんないという人は、お父さん…つか、今の若い人たちにはお祖父ちゃんに当たるのかな、とにかくお祖父ちゃんや曾祖父ちゃんに訊いてご覧なさい。
多分、お目目をキラキラさせて子供時代や青春時代に見たステキな西部劇の話をしてくれると思いますよ。

閑話休題、とにかくウェインは写真なんかを見て分かる通り、、西部の荒くれ男というイメージをそのまま具現化したという感じの、ゴツくて、タフで、カッコいいオッサンです。
無論若い頃はオッサンではなかったわけですが、顔形がかなりオッサン臭いので、年寄りにしか見えないのだよなw
実際に西部劇映画でも青年などよりオッサンの役柄を務めるほうが多かったと思うし、またそれが合っていた。
ちなみに、ウェイン自身も西部劇をこよなく愛していたといわれる。
この点は後輩のクリント・イーストウッドなどとも同じだが、ウェインは西部開拓時代に生きていた古老や元ガンマンなどに綿密な聞き取り取材を行い、彼らが当時使っていた服装や拳銃の仕様、いろいろな生活道具などを再現し、自分の映画の中でごく自然に役柄に取り入れて使ってもいる。
時代考証家や小道具に任せっきりの日本の時代劇俳優(無論例外はあろうが)などよりも、随分熱心で真摯な向き合い方ではないか。
単純に、凄いもんだと僕などは思ってしまいます。
ちなみに、後輩のイーストウッドはさらに顕著で
「アメリカが世界に誇れるものは西部劇とジャズだけ」
という発言を常々してはばからないし、自身も拳銃のファストドロー(早抜き撃ち)の名人である。
ファストドローの地方大会での優勝経験も持っているほどなのだから、入れ混み具合はいささか常軌を逸していると言ってもいいだろう。

いずれ、西部劇というかつてスクリーンを席巻した人気ジャンルで名を成した俳優らしく、ウェインはいかにも「男臭い」ルックスと重厚な演技で人気を博した。
主演した西部劇映画なんて、名作、凡作の違いはあれども数えきれないほどだろう。
だが、西部劇ブームが過ぎ去った60~70年代になると、自身も歳を取り、人気も斜陽になったことから主役を張れるような大作の仕事もなくなり、演技に伸び悩んだ。
1974年制作のこの映画の時点では、非常にそれが顕著で、年齢的にもすでにロートルもいいところ。
驚く無かれ、ウェインは1907年生まれ、つまりこの映画の時点で70歳に近い老人である。
西部のタフガイもただのポンコツオヤジとなって当然な年代だ。
さすがに身長2米に近かったと言われる大男のウェインだけあって、劇中での佇まいには見ていて貫禄が十分にあり、したがって絵面に大きな存在感をもたらしているのは間違いないが、演技の方はどうかといえば、相変わらずの西部劇的な大味なので、あくまで現代劇であるこの映画では見ていて大変強い違和感を覚えてしまう。
この辺りは見ている方の「慣れ」にも影響される部分が大きいのだろうとは思うが、とにかく見ていて「なんかヘン」なのだ。

そして一番の問題点は、この映画のシナリオが「ダーティ・ハリー」の影響を非常に強く感じさせることだ。
悪には容赦無く暴力を振るうはみ出し刑事、部下や同僚にはそれなりの人望があるが上司からは嫌われている署内での構図、それに伴い組織からの援助が受けられない境遇、それがもうハリー。キャラハン刑事そっくり。
デジャヴ感を拭い切れないほどだ。

実はこれには訳があって、ダーティ・ハリーのシナリオは、最も始めにはウェインのところへ持ち込まれた企画だったのだ。
ところが、ウェインは当時仕事に困っていたのにもかかわらず、あくまで大物俳優の気分が抜けきらなかったためか、役柄に嫌悪感を感じ、話を蹴った。
そこで次にシナリオが持ち込まれたのが、同じように仕事がなくて困っていた「荒野の用心棒」や「ローハイド」のクリント・イーストウッドだった。
結果として映画は大当たりして、イーストウッドはスターの座に返り咲いたのだが、ウェインはこれを心底後悔し、また嫉妬したらしい。
それで安直な二番煎じに乗ってしまったわけである。
結果は…いかにも悲惨な映画となってしまったわけだが。

警察内部での麻薬の横流しやそれに関するゴタゴタという構図は、今の刑事ものドラマでは非常にお馴染みなのだが、そこは大物であるウェインの主演作であるので、西部劇的というか、あらゆる出来事が随分あっさりと描かれている。
なんというか、全体的にもったりまったりとう感じで、ハリーのほうにに出てきたスコーピオンみたいな凶悪無比のキチガイや、当時の社会現象や風刺などは一切なく、話が淡々と、まったく盛り上がらないまま進んでいく。
ラストは意外な犯人が出てくるかと思えばそうではなく、最初から目をつけていた麻薬マフィアが黒幕だったという(厳密には違いますが、そういう印象が強い)何のひねりもないオチなど、目も当てられない。
ウェインの歳がバレるもたもたしたアクションシーン、スピード感に書けるカーチェイス、西部劇風にあっさりとした銃撃戦、そしてなんだかふわふわしたBGMと、正直、見るべきものは殆ど無い。
これ、当たらなくて当然の映画だなと染み染み感じた。
いや、ここまでつまらないと思って映画も久しぶりだったので自分でも驚くほどだ。

今ではすっかり有名になったハリーの44マグナムに対抗するべく、ウェインが使う武器はイングラム「マック11」サブマシンガンなのだが、いまいちこの武器の凄まじさというものも表現しきれていない。
マック10の方なら45口径なのでそれなりに形も大きく、威力もかなりあるのだが、使うのは9ミリ口径の11の方なので、かばんに隠せるほどのちっぽけな大きさ。
それが2米の大男ウェイン爺さんの手に握られてご覧なさい。
もうおもちゃにしか見えませんよ(^^;)。
当時はマグナムなんてものが今ほど一般的ではなかったので、ハリーの44マグナムはすさまじいまでのインパクトがあったように思う。
それに対抗するには何か別の、強力無比な武器が必要だったのだろう。
それでイングラムに白羽の矢が立ったわけだが、それならもっと印象を強く与えるような見せ場がないとダメだろうに、そのシーンすらない。
銃砲店で試射するくらいじゃねえ。
しかもイングラムだけ使うのではなく、ウェインは普通に拳銃も併用して使うので、ハリーの44マグナムみたいな鮮烈な印象がないのだ。
使い方、見せ方によっては「すげぇ銃だ!」っていうところを十分観客に魅せつけられたんじゃないかと思うのだけれども…。

最後まで黙って見ていましたが、見終わったらなんかこう…悲しいというか切ないような気分にさせられる映画でした。
案の定、この映画を撮り終えた5年後の1979年にウェインは死去。
この映画は人生の最晩年に往年の大スターが咲かせた徒花だったのだろうか。

なんだかこき下ろしになってしまいましたが、西部劇ファンとしてウェイが好きなだけに、それだけがっかりしたということですね。
その意味では、ウェインのファンの方は見ないほうがいい映画だと思います。

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2016-01-06 23:59 | カテゴリ:映画レビュー
昨年末に、以前より見よう見ようと思いつつもなかなか手が出ずにいたBlu-rayソフトの「ホビット エクステンデッド・エディション トリロジーBOX」を、ついに購入しました。
いや、こんなもったいぶって書くことでもないんだけど、値段がやっぱり1万円超えるとなるとなかなか手が出なくって二の足を踏んでいたものですから。
お正月は殆どこれを見て過ごしていました。



詳細な感想は後に譲るとして、率直な感想としては「よくこれだけの大作映画を作れたもんだな」ということでした。
なにしろ映画自体が三部作、しかもカットされた映像を含めた最長版、更には映画一部作がそれぞれ2時間半を超える長さですので、通して見ているだけで 時間がかかります。
ただ、その時間を感じさせないほど面白い映画に仕上がっているのは確かで、この辺りに監督・ピージャク(ピーター・ジャクソンの略)の手腕が現れているようです。

僕はこの原作に当たる「ホビットの冒険」を読んだことが何度かありまして、大体のお話の流れは知っていましたが、この作品はそれぞれ映画的なアレンジを加えつつも、原作を概ね忠実になぞっている作りになっています。
この辺りは「ロード・オブ・ザ・リング」の時にも感じましたが、むしろ結構退屈だったりする原作を、キャラクターや舞台設定の掘り下げを行ったり、随所に大胆なアクションシーンなどを加える事にによって、一流の活劇映画に仕立てている辺りは流石です。
まあ、ドワーフのボス・トーリンが見ていてとにかくイラつくとか(これは原作からしてそうなので仕方ない)、エルフとドワーフの恋模様とか、ガラドリエルが囚われのガンダルフを助けに来るとか、なんか合戦シーンが妙に軽く見えるなど、いささか鼻につく部分もあるにはあったのですが(映画的な見せ場なので必要な物だったろうとは思うのですが…)、それでも森に張り巡らされた蜘蛛の巣と巨大蜘蛛のイメージや、ドラゴンが湖の町を襲撃するシーン、エレボールの城門前で大軍勢が激突する場面など見ていて鳥肌が立つような思いに駆 られる部分が多く、大変楽しく鑑賞しました。
これはコアな原作ファンの人もちょっと文句を言えないような出来にはなっているんじゃないかと思いました。

そして、本編などよりもある意味興味深い内容だったのが、付録に付いてくる特典映像の方です。
いわゆるメイキングビデオなんですが、一部作につき10時間に及ぶというかなり長いものでデイスクも二枚組、情報量が半端ではない長さなので正直、見ているだけでも疲れるほどなのすが(^^;)、ピージャクの映画の作り方とか、キャラや舞台の掘り下げ方などの姿勢が非常に真摯で、キャラク ターなどを考える際に詳細な設定を作り込んでから形にしていくという辺りなどは非常に強い共感を覚えました。
やっぱりファンタジーってのはこうなんだよなーと一人で納得しておりましたw
軽いノリで作っても、世界観とか空気がペラペラになるだけだと思うのですよね。
いや、自分の作品がそういう確固たる世界観を築けているのかといえばそうではないと思うのですけど…僕の場合は剣と魔法の特徴に従った、言ってみ れば典型的な「TRPG」的なものですから。
しかしそれでも、そう思うのですよ…。
やはり細部にまでこだわって、国の歴史だの、住民の文化風俗だの、そういう物語には直接関わってこない部分や表に出てこないような部分でも細かく考えてこそ、「架空のリアリティ」「その世界の生活感」みたいなのが入り込む余地が生まれるに違いないと思うんです。
この考えは間違っていなかったと確信しました。

非常に創作心が刺激される映像の数々でした。
お値段は張りましたが、やはり購入してよかったと思います、
いいものを見させていただきました。
映画スタッフの皆さんに感謝。

2015-12-27 13:48 | カテゴリ:映画レビュー
「ブレーダーズ クライチカ」なるホラー映画をDVDで鑑賞。
この映画は1997年のカナダ映画で、その当時のタイトルは「ヘモグロビン」でした。
もしかして、こちらの方のタイトルに聞き覚えがある方のほうが多いかも。
DVDを発売する際に、ヘモグロビンでは閉まらないのでタイトルを変えたようです…まあ、原題は「ヘモグロビン」「ブレーダーズ」「子孫」という3つのものがあるようですが。



それはともかくこの映画、実はラヴクラフトの「潜み棲む恐怖」という小説を原作としています。
確か創元文庫の「ラヴクラフト全集」の5巻か6巻に収録されていたかと思いますが…しばらく読んでいないので忘れちゃったな。
で、おまけに脚本がダン・オバノン(ただし他の脚本家数名との共同執筆)、主演は北欧が産んだ怪優ルトガー・ハウアーというわけで、明らかにB級ホラー臭が香ばしいシロモノ。
そこにつられて今回鑑賞したというわけですが…。
うーん、Amazonなどのレビューでも評判はあまりよろしくなかったので(酷く貶める人も少ないようですが)、覚悟はしておりましたが…それでも見終わったあとにガクッと来るだけの物がある映画でした。

原作の「潜み棲む恐怖」は、ニューヨーク郊外にある保養地キャッツキル山脈に建つ古い館の廃墟を舞台にした奇怪な事件を描くもので、かいつまんでお話しますと、かつてオランダからアメリカに植民してきた貴族が、人里離れた山奥で何代にもわたって近親結婚を繰り返した結果、その子孫は奇形と退化により人食いの化け物になったという物語です。
原作者ラヴクラフトの家系は狂人が多い血筋で、彼の両親も精神病院へ入院しそこで狂死していますから、どうもラヴクラフトはいつか自分も発狂するのではないか?という密かな恐怖を持っていたようです。
その「血筋の恐怖」にアンモラルな近親相姦を風味づけして生まれたのがこの「潜み棲む恐怖」という作品なわけですね。
なおHPL作品の中で同じ血筋の恐怖をテーマに持つものは他にもありますが、なかでも「インスマスの影」が白眉だと思います。

そういう作品を原作に使用しているため、この映画も近親相姦と血筋にまつわる恐怖を描いています。
主人公は、原因不明の血友病を持つ青年で、自分のルーツがニューイングランド地方の孤島にあることを知り、血筋をたどれば病気の原因や治療法の手がかりが掴めるのではないかと期待して、島へやってきます。
その島で自分の一族について色々と調べていくうちに封印されていた記憶が徐々に思い出されてきて、それと並行するように島で謎の失踪事件が頻発する…というのがあらかたのストーリーです。
この青年が(一応ハンサムな顔なんだけどラヴクラフト並みに顔が長いw)自分の家系に迫っていくうちに「血脈の恐怖」が募っていき…となるのが正しいあり方だと思うのですが、そのあたりがなんとも中途半端な上に、説明や表現が不足しており、全然「恐怖」が募ってきません。
主人公は劇中、度々鼻血を吹いて倒れます。
いや、病人なんだからそりゃ倒れるだろうよ。
けれどもそこから伝わってくる恐怖はあくまでも「主人公の病気=死に対する恐怖」なんですよね。
死にたくないから治療法を求めてルーツを辿るわけで、それを描写するのが間違いだとはいえませんが、この映画の主題はなんだっけ、自分の中に潜む血筋の恐怖ですよね?
主人公には自分のルーツを辿って絶望したり、混乱したりしてもらわないといけないわけです。
ところがこの青年は、自分の一族がいるとわかると(当然怪物ですよ?)妙に興奮&感動し、ラストはなんと自らすすんでその仲間になる始末。
「彼は一族と再会出来たのだ」
とかいうナレーションまで入って驚愕の仲良しこよしエンド。

どこが血筋に潜む恐怖なんだ???

けっきょくは家族っていいな♡」っていうハートフルなテーマになってしまってるんですよね。
どこが原作でラヴクラフトが書きたかったこととあまりにも乖離しており、ガッカリしてため息しか出ませんでした(^^;)。
それに、「近親相姦」という、本来であればおぞましい行為であるはずのものを、美男美女の俳優を使って耽美的な描写で表現しているところもどうにもいけない。
美男美女を使うなということではなく、近親相姦を重ねた末の結果として、島で人を襲う怪物が生まれるわけですから、ここは美しく見せてはいけないところだと思うのですよね。

またご都合主義な展開がやたら目立ちます。
前にも書きましたが、主人公は血友病でやたらと倒れます。
「もうダメだ、僕は死ぬ」
とか二言目にはすぐ弱音を吐いて、看護婦の妻(金髪はきれいなんだけどイマイチな顔)に
「そういうこと言わないで!」
とか怒られます。
そんな今にもおっ死んじまいそうな虚弱な若者が、一族の者だという胎児の標本を食べると急に元気になって、
「身体が再生していくようだ」
とか言い出して、妻に挑みかかってバコバコファックするわ(このシーンは本当に必要だったのか?)、突いて歩いてた杖を放り投げて走りだすわの急回復ぶり。
一体何なの?
また、目の前で女性や子供が怪物にバタバタ殺されていくのにぽかんとして何もせず、最後は仲間になっちゃうんですから、呆れてものも言えませんや。
こういう主人公って一体何なんですかね、感情移入なんてとても出来ませんし。
いや、もしかしたらこの青年が主人公じゃなくて、ハウアー演じる島の医者のほうが主人公なのかもしれませんが…。

登場する怪物は前述のように近親相姦の果てに生まれた、異形の小人みたいな奴らなんですが、こいつらが全然強そうじゃない。
なんかピッケルみたいな武器を持って襲ってくるんですけど、足がないやつとかいたりして動きも遅いし、何しろ身体が小さいので大人が蹴っ飛ばしただけでも死にそう。
地下に張り巡らせたトンネルを通ってくるのだけが厄介ですが、こんなのに襲われても全然怖くないです。
あとは、こういう化け物みたいな見た目の連中の中で、なぜ主人公の青年だけが真人間として生まれてきたのか、とても不思議です。もちろん説明は一切ありません。

主人公の脇を固めるサブキャラたちも微妙。
秘密を知っているらしい車いすのババアは核心を離さないまま怪物に殺され、6歳の頃から声が出ないという女性は(プロレスラーのスティングに似ている)目の前で友人(へそ出しルックのブス)が化け物に殺されると怒りのあまり怪物をナイフで刺殺、
「もう許せない!」
とか叫ぶんですが、おお、しゃべれない奴が喋ったぞ!ここから大反撃が…と思ったら次の瞬間あっさり化け物に殺されるとか、一体何がしたいのかよくわからない演出もちらほらで、見終わってなんだかモヤモヤしたものが残ります。

そんな穴だらけで、きっと泉下のHPL御大も泣いているであろうトホホな映画ですが、良い点もちらほらあります。
まずは舞台となる孤島のうらぶれた雰囲気がいいです。
荒れた海と岩礁に取り巻かれ、強い海風が吹きすさぶ光景がいかにもホラー的でちょっとワクワクしました。
いかにも外国漁師の家的な小汚い建物とかもラヴクラフト的でいいですね。
また、この島は男がほとんど遠洋漁業の出稼ぎに出払っているという設定で、住民には女子供と年寄りしか残っていないというあたりも、弱っちい化け物の襲撃にも非力で組織的な反撃ができないという理由付けになっていて工夫が見られました。
あとは別け隔てなく子供も殺されるのがいいw
スピルバーグの「ジュラシックパーク」なんて、一番最初に恐竜に食われて当前のガキが、高圧電流かなんかの金網にあたってピクピク言ってるくせにいつまでも生き残ってて、何だこりゃガキ優遇してんじゃねえよとイライラしましたが、そういうことはこの映画に関しては、ないですw
化け物が弱そうと書きましたが、唯一好感をモテる点は、この化け物が人の食い方を知っているところですね。
よく、人食い人種とかのホラー映画ではナマニクにかぶりついたりしてますが、アレはおかしいです。
血抜きとかしないと肉なんて臭くて食べられないので、ゾンビとかじゃないかぎり、生肉を食べるにしても血抜きとか解体調理くらいはするはずです。
その点この化け物は殺した人の死体を逆さ吊りにして、手首の血管を切ってちゃんと血抜きしているんですよね。
そこのところが芸コマでなかなかよろしいかと思います。
また、ヒロインはイマイチな顔ですが、脇役で出てきたホテル兼葬儀屋の女の子が可憐な金髪ギャルで、ミニのワンピースの裾から覗くちょっと細めの足がとてもキレイでした。
どこか物憂げな響きの声もまた可愛らしいのですが、途中であっさり殺されちゃいます。
まあ墓荒らしをしに行った報い的な感じで描かれてますが、どうせならこの子をヒロインにすればいいのに…。

そんなわけでこの映画、多少見るべきものはあれども、全般的にはB級どころかC級に近い感じで、わざわざ買って見るようなものでもないような気がします。
主演を冠されているハウアーの行動は終始地味で、全然活躍しません。
彼の活躍が見たい方は「ブラインド・フューリー」を見ましょうw
この映画はゲオの50円レンタルセールとかの時に借りて、鼻くそでもほじりながら見るのが一番いい鑑賞法かもしれません。


2015-12-23 21:49 | カテゴリ:映画レビュー
 先日、Amazonで予約していた「ヘルハザード 禁断の黙示録 HDニューマスター版」のBlu-rayソフトが手元に届きましたので、早速鑑賞してみました。
 この映画についてのレビューはこのブログの「超時空映画館」でも書いておりますので、詳細は割愛しますが、ラヴクラフトの代表作の一つと言われる「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」を原作とした、1991年制作の米国産映画です。
監督はダン・オバノンです。
 しかし本当になんとかならないのか、この邦題は…w

 先に総括しますと、ソフトの出来としては大変よいものだと思います。
 本編の映像はデジタル処理が加えられたことでかなりクリアかつシャープになり、これまでVHSビデオでは分かり難かった部分まで判別できます。
 いくつか例を上げますと、まず映画冒頭の病室のシーン。
 ここは血まみれの凄惨な光景が映し出される場面ですが、今まではただの血の海にしか見えなかったものが、デジタル処理によって血液以外にも煙を上げる黒い灰が散乱していることが見て取れるようになりました。
 また中盤に、主人公の探偵が車の運転中、ふとルームミラーに目をやると後部座席に人影があり、驚いて急ブレーキを踏むシーンがあります。
 VHSのほうだとこの人影がちょっと誰だか分からない感じだったのですが、Blu-rayでははっきりと誰だか分かるのです。
 この鮮明になった映像のおかげで、地味に物語の表現度(観客にしてみれば理解度)が増しています。
 ただこの映画の性質上やたら多くなっている暗闇のシーンは当然そのままなので、最も気分が盛り上がる地下空洞の探検場面などは、相変わらずなにがなんだかわからないようなあやふやな印象でした(^^;)。
 ただ、今回改めてこの映画を鑑賞しなおしてみて、今まではなんとなく見過ごしていた演出を数多く発見することが出来、自分でもちょっと驚きました(数えきれないほど見ていたはずなんですが…それもぼんやり見ていたということの証明でしょうか)。
 こういう部分も、映像がクリアになったお陰なのかもしれません。

 また、このソフトには編集の都合でカットされてしまった未公開シークエンスが、特典として収められています(他には米国と日本双方の映画予告編も収録)。
 しかもその長さは20分近くに及びます。これは結構なボリュームなので正直驚きました。
 もともと、監督のダン・オバノン(生粋のラヴクラフトファン)は生前、この映画について

「映画会社が勝手に編集してズタズタにしてしまった映画なので、いまだに冷静には見られない」

等と言っていたようですが、なるほどその言葉は真実であったわけです。
シーンとしては「こりゃ切られて当然だな~」と思える場面や、「これを入れておけばもうちょっと物語展開もがスムーズに見えたろうに…」と思えるものまで様々です。
 前者の最たるものが主人公とヒロインのベッドシーンです。
 これは見ていて本当に蛇足の一言で、このシーンがもしカットされずに残っていたとするなら、ヒロインが亭主の入院中に主人公をベッドへ誘う単なる浮気女というか、今風に言えばビッチですかw、そういうふうにしか見えなくなってしまうのです。

「主人を愛してますから、信じます」

みたいなセリフで夫婦の絆みたいなのを表した映画序盤のシーンは一体何だったのかということになってしまいます。
 後者は田舎の農家に引きこもるウォードを訪ねた主人公とヒロインが追い返されるシーンです。
ここでウォード(実はすり替わったカーウィン)と主人公が言い争うのですが、その内容が話本編そのままだとどこか咬み合わない感じなので、しっくり来ません。
 ところが、カット場面を見るとちゃんと辻褄を合わせるセリフが入れられており、どうしてこれを削ってしまったのだろうか…と不思議になります。
 しかしまあ、今となってはすでに貴重になった映像が多数収められているのは確かなことで、僕のようなこの映画のファンにとっては非常にありがたい特典と言えましょう。
それにオバノンが嘘つきではないことが証明されたわけですからね。
 
しかしよく考えてみると、この部分が全て映画会社がカットしていたのだとしたら…逆に言えばオバノンが全部映画の中に入れようとしていたのであるなら、彼の演出能力を疑ってしまうような部分が無きにしもあらず、ですね(^^;)。

 そしてさらに、このソフトには日本語吹き替え音声が収録されています。
 この映画が公開され、ビデオ落ちした当時は洋画の吹き替えビデオというのが結構流行していたようで、同じ時期にビデオ発売された作品には「原語版」と「吹き替え版」の二種類が出ていたものでした(「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世記」など)。
 このソフトには、その吹き替え版で発売された音声がそのまま収録されたようです。
 しかし、今回はこの日本語音声がいささか困りものでした。
 いや、確かに日本語音声収録は、目が悪くて字幕を追っているだけで疲れる僕のようなタイプの人間には非常にありがたいのですが、ちょっと今回はキャスティングが悪かったかなという個人的な印象があるのです。
 出演しているのは井上真樹夫、麦人、土井美加などのベテラン揃いで豪華な上に芝居達者な顔ぶれ…のはずなのに、なんか違和感がある。
 キャスティングの俳優と声優が合っていない感じです。土井美加なんかは声がそれなりにハマって聞こえるので、土井さんの汎用性wは凄いなぁと改めて感心したわけですが、どうもそれ以外がみんな駄目な感じ。  
 特にウォード役の麦人が致命的に合っていない。
 ウォード役のクリス・サランドンの低い、しかしよく通るあの声とは似ても似つかない。
 それに芝居もいけませんでした。
 原語版では、ウォードと入れ替わった魔人カーウィンの声をサランドンはしわがれ声を使い演じ分けていましたが(原作でもそうでした)、吹き替えは最初の頃はしわがれた声…というか元からあの声なのであまり変わってないんですけど(^^;)、とにかく途中でしわがれ声の芝居をあっさりやめてしまいます。アレをやり続けるからこそ、ラストの病室でカーウィンが本性を表し本当の声で話す場面が生きてくるはずなんですけども。
 あとはセリフの翻訳もなんか…僕は英語なんてチンプンカンプンなんで実際のところはよくわかりませんが、ラストの方のカーウィンの言い回しなどはなんだか妙に説明臭かったり、無駄に迫力を出そうとしてわざわざオーバーな表現を選んでいるいるような感じなのです。
 まあたしかにキャラ自体が無茶なことを話しているはずなのでしかたがないといえばそうなのですが、もう少しシンプルなセリフにしても良かったのでは?
 あと、カーウィンがウォードを殺す理由が、吹き替えでは

「自分でも人肉を食いはしたが、あいつはそうした自分が許せなかった」

みたいなことを言っているけれども、これでは理由が通りません。復活して常に飢えに苛まれているというカーウィンが人間を襲うのには納得がいきますが、カーウィンを蘇らせただけで中身は普通の人間であるはずのウォードが、なぜ人肉を食わねばならないのか、謎です。
 その理由を説明するセリフも無し。どうにも納得がいきません。
 同じシーンを字幕では

「肉の処理の方法についてあいつとは意見の齟齬があった。かれの良心が咎めたのだろう」

というように訳しているので、人肉を食うカーウィンをウォードが止めようとしたので殺された…という意味が通ります。
 日本語訳を書かれた方は、聞いたままを翻訳されたのかもしれませんが、もう少し話の前後を考えて欲しかったですね。
 吹き替えを聞くのが楽しみだっただけに、今回は少しばかり残念でした。
 
 …などと結構辛口なことも書いたように思いますが、総じて大変満足度の高いソフトだといえます。
 クリアな映像に特典など、ビデオ購入から10年近く待った甲斐は十分にありました。
 ダン・オバノンのコメンタリーなどがついていれば最高でしたが、なにしろ故人ですしそこは仕方のないところですね。
 発売元の是空さん、販売元のハピネットさん、本当にありがとうございますm(_ _)m。

 この調子で「ヘルゴースト 悪魔のスケアクロウ」のBlu-rayも宜しくお願いしますw

 


 

2015-08-07 00:36 | カテゴリ:映画レビュー
久しぶりに映画を見ましたのでレビューを書いてみることにします。
先ほど過去記事を見返したところ、2013年辺りにはかなり書いていたみたいですが、ここ2年位は全く書いていなかったみたいですね。
まあ「ロボットガールズZ」の感想なんかは書いてますが、あれはアニメだしなぁ。
いずれにしろ、まともに映画を見ていなかったということなのかもしれませんね。

きょうは先日ブルーレイを購入した「マウス・オブ・マッドネス」のレビューです。



この映画は、結構古いので(約20年前)ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
「遊星からの物体X」「ハロウィン」「ザ・フォッグ」等数多くのホラー映画を世に送り出してきた、同ジャンルの巨匠と呼んでも差し支えないジョン・カーペンターの監督作品です。

ググっていただけるわかりますが、この映画はカーペンターがH・P・ラヴクラフト(以降はファンの慣例に従いHPLと略す)の物語を下敷きにして制作したものといわれ、随所にHPL作品に対するオマージュが捧げられています。
カーペンターは意外にも(?)HPLのファンらしく、かつてはHPLの代表作の一つ「狂気の山脈にて」の映像化をやってみたい言う趣旨の発言をしていたことがありましたし、当時ロブ・ボーティンの手によるすさまじい特殊メイク技術が話題を呼んだ「物体X」は舞台が南極だったり姿を変幻自在に変化させる生物が登場するなど、「狂気の山脈にて」から強い影響を受けている作品と言えます。
この映画もそんな1本というわけです。
ただし、結局はアナグラム、言葉遊び程度の事なので、過度の期待は禁物でしょう。
期待し過ぎると確実にがっかりします。
僕が見た感じですと、雰囲気はHPLの作品というよりも、現代ホラー作家のスティーブン・キングの作品の方に似通ったものがあるように思います。
悪役のサター・ケインのモデルがキングらしいので、しかたがないといえばしかたがないのかもしれません。

HPLをリスペクトしてる割になんか違うんじゃないのか、とはHPLファンとして思わざるを得ませんが、文句を言ったところで、カーペンターだってHPL作品を完全再現しようとして撮っているわけではないですからね(苦笑)。
HPLはあくまでも小説、カーペンターは映画で他人に「自分の見ているもの」を見せたいと思っていたわけですから、事前と表現方法は異なってくるわけで、形が違ってくるのは当然でしょう。
ましてHPL原作と記しているわけでもないので、カーペンターに罪はなく、この辺りは単なるHPLファンの愚痴にすぎませんw
ただしストーリーの流れはHPL作品に似た部分があったように思います。
主人公が邪神の知識に触れ、最後は発狂するという流れで「インスマスを覆う影」とか「クトゥルフの呼び声」とか、そういうお話のパターンを踏襲しているんです。
カーペンターも一応、気は払っていたのでしょう。

物語のテーマは、タイトル通りキチガイを扱っているのでアレなんですがw、おそらく「マイノリティの恐怖」と「侵食される恐怖」、そしてこのテの映画お得に「人類の終末」でしょう。
マイノリティ云々っていうのは、「多数派に属している自分が気づかないうちに少数派になっていて、次第に追い詰められていく」というものです。
主人公のトレントは最初、自分は一般的な人間と同じように「正気(多数派と言い換えられる)だ」と思っていますが、失踪したホラー作家サター・ケインの行方を追ううちに立場が次第に変化して行き、最終的にはキチガイの中に取り残されたマイノリティに転落してしまう。
そして最後は自らも発狂するという経緯をたどります。
これは映画の序盤で、トレントと女編集者リンダとの会話の中に
「あなたは自分が正気でケインが狂っていると思っているかもしれないが、その立場が逆転したらあなたこそが狂人になる」
と言われるシーンからも顕著です。
このテーマは「ゼイリブ」や「物体X」、マシスンの小説「地球最後の男」、ロメロの「ゾンビ」シリーズなどにも共通する部分ですね。

侵食というのは、ケインが書いた物語が現実となり、社会が徐々に変貌していくという恐怖です。
そしてそれを止められない。逃げて抵抗するか、自分も飲み込まれるしかない。
トレントは前者を選び、リンダは(不本意ながら)後者を選びます。
この無力感と不気味さよ!
そしてそれは本という媒体を通して世界中へ広がっていき、キチガイの数が爆発的に増えるのです。
本を読めない人間には映画があるという抜け目なさ。
こうして世界は滅び、邪神が地上に蘇るのです。

終末というのは、まあホラーではありきたりのものです。
終末にしちゃちょっと迫力不足かなとも思いましたがw、ラストの誰もいない映画館のシーンが非常に印象的でした。

もとから不条理なシーンが連続する映画なので、突っ込みどころは多いのですが、それが目立ちませんw
この辺りは計算して作ってんだなと思われて面白いですw

役者面ではサム・ニール(オーメン3でおとなになったダミアンを演じた人)が疑り深い保険調査員から単なるキチガイに身を落としていく主人公絵を熱演します。
この人は顔が怖いので(本当に悪魔の子のようw)、いちいち動作に迫力が出ていてすごいですねw
序盤で、保険金詐欺を働いた人間を問い詰めてやり込めるシーンが、非常に切れ者っぽく見えました。
まあ怪物からヒイヒイ言って逃げるシーンはみっともなかったですがw
悪役を演じるユルゲン・プロホノフの演技が、出番は少ないもののまさしく悪玉傲慢で、邪悪で尊大で、貫禄たっぷりでした。さすが演技力ありますねえ。
他にもチャールストン・ヘストンとか、意外な大物が出演してるんですが、ヒロインを演じるジュリー・カーメンはいただけません。
顔立ちはそれなりにいいのですが、肌がとにかく汚い。吹き出物とシミだらけんです。
ちゃんとメイクをしてる上でこれですから、素顔はどんなものなんだと思っちゃいますが(^^;)、もうちょっとなんとかならなかったのか。
なんつうのかな、カーペンターの映画はヒロイン選びが本当にイカンですねえ。
ま、最新作の「ザ・ウォード」では女の子が皆かわいこちゃんになってましたがw
カーペンターはAKB48のファンだそうなので、少しは目が肥えたというところでしょうか。
いや、おれAKBはよくわからんけどw

初見でしたがなかなか楽しめる映画でした。
HPLファンの方には期待せずご覧になることをお勧めしますが、それなりには楽しめる内容となっております。
特撮もなかなか頑張ってますし(しかし怪物の全身像くらい、ハッキリと見せて欲しかったなあ)、エグいシーンも少ないので、その手のシーンが苦手な方にも安心です。
家族で見られるとは言いませんが…w
今ならアマゾンで安くBDが購入できますし、お気が向かれましたらご覧になられてみるのもよろしいのではないでしょうか。
長々とスンマソンw