2015-12-23 21:49 | カテゴリ:映画レビュー
 先日、Amazonで予約していた「ヘルハザード 禁断の黙示録 HDニューマスター版」のBlu-rayソフトが手元に届きましたので、早速鑑賞してみました。
 この映画についてのレビューはこのブログの「超時空映画館」でも書いておりますので、詳細は割愛しますが、ラヴクラフトの代表作の一つと言われる「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」を原作とした、1991年制作の米国産映画です。
監督はダン・オバノンです。
 しかし本当になんとかならないのか、この邦題は…w

 先に総括しますと、ソフトの出来としては大変よいものだと思います。
 本編の映像はデジタル処理が加えられたことでかなりクリアかつシャープになり、これまでVHSビデオでは分かり難かった部分まで判別できます。
 いくつか例を上げますと、まず映画冒頭の病室のシーン。
 ここは血まみれの凄惨な光景が映し出される場面ですが、今まではただの血の海にしか見えなかったものが、デジタル処理によって血液以外にも煙を上げる黒い灰が散乱していることが見て取れるようになりました。
 また中盤に、主人公の探偵が車の運転中、ふとルームミラーに目をやると後部座席に人影があり、驚いて急ブレーキを踏むシーンがあります。
 VHSのほうだとこの人影がちょっと誰だか分からない感じだったのですが、Blu-rayでははっきりと誰だか分かるのです。
 この鮮明になった映像のおかげで、地味に物語の表現度(観客にしてみれば理解度)が増しています。
 ただこの映画の性質上やたら多くなっている暗闇のシーンは当然そのままなので、最も気分が盛り上がる地下空洞の探検場面などは、相変わらずなにがなんだかわからないようなあやふやな印象でした(^^;)。
 ただ、今回改めてこの映画を鑑賞しなおしてみて、今まではなんとなく見過ごしていた演出を数多く発見することが出来、自分でもちょっと驚きました(数えきれないほど見ていたはずなんですが…それもぼんやり見ていたということの証明でしょうか)。
 こういう部分も、映像がクリアになったお陰なのかもしれません。

 また、このソフトには編集の都合でカットされてしまった未公開シークエンスが、特典として収められています(他には米国と日本双方の映画予告編も収録)。
 しかもその長さは20分近くに及びます。これは結構なボリュームなので正直驚きました。
 もともと、監督のダン・オバノン(生粋のラヴクラフトファン)は生前、この映画について

「映画会社が勝手に編集してズタズタにしてしまった映画なので、いまだに冷静には見られない」

等と言っていたようですが、なるほどその言葉は真実であったわけです。
シーンとしては「こりゃ切られて当然だな~」と思える場面や、「これを入れておけばもうちょっと物語展開もがスムーズに見えたろうに…」と思えるものまで様々です。
 前者の最たるものが主人公とヒロインのベッドシーンです。
 これは見ていて本当に蛇足の一言で、このシーンがもしカットされずに残っていたとするなら、ヒロインが亭主の入院中に主人公をベッドへ誘う単なる浮気女というか、今風に言えばビッチですかw、そういうふうにしか見えなくなってしまうのです。

「主人を愛してますから、信じます」

みたいなセリフで夫婦の絆みたいなのを表した映画序盤のシーンは一体何だったのかということになってしまいます。
 後者は田舎の農家に引きこもるウォードを訪ねた主人公とヒロインが追い返されるシーンです。
ここでウォード(実はすり替わったカーウィン)と主人公が言い争うのですが、その内容が話本編そのままだとどこか咬み合わない感じなので、しっくり来ません。
 ところが、カット場面を見るとちゃんと辻褄を合わせるセリフが入れられており、どうしてこれを削ってしまったのだろうか…と不思議になります。
 しかしまあ、今となってはすでに貴重になった映像が多数収められているのは確かなことで、僕のようなこの映画のファンにとっては非常にありがたい特典と言えましょう。
それにオバノンが嘘つきではないことが証明されたわけですからね。
 
しかしよく考えてみると、この部分が全て映画会社がカットしていたのだとしたら…逆に言えばオバノンが全部映画の中に入れようとしていたのであるなら、彼の演出能力を疑ってしまうような部分が無きにしもあらず、ですね(^^;)。

 そしてさらに、このソフトには日本語吹き替え音声が収録されています。
 この映画が公開され、ビデオ落ちした当時は洋画の吹き替えビデオというのが結構流行していたようで、同じ時期にビデオ発売された作品には「原語版」と「吹き替え版」の二種類が出ていたものでした(「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世記」など)。
 このソフトには、その吹き替え版で発売された音声がそのまま収録されたようです。
 しかし、今回はこの日本語音声がいささか困りものでした。
 いや、確かに日本語音声収録は、目が悪くて字幕を追っているだけで疲れる僕のようなタイプの人間には非常にありがたいのですが、ちょっと今回はキャスティングが悪かったかなという個人的な印象があるのです。
 出演しているのは井上真樹夫、麦人、土井美加などのベテラン揃いで豪華な上に芝居達者な顔ぶれ…のはずなのに、なんか違和感がある。
 キャスティングの俳優と声優が合っていない感じです。土井美加なんかは声がそれなりにハマって聞こえるので、土井さんの汎用性wは凄いなぁと改めて感心したわけですが、どうもそれ以外がみんな駄目な感じ。  
 特にウォード役の麦人が致命的に合っていない。
 ウォード役のクリス・サランドンの低い、しかしよく通るあの声とは似ても似つかない。
 それに芝居もいけませんでした。
 原語版では、ウォードと入れ替わった魔人カーウィンの声をサランドンはしわがれ声を使い演じ分けていましたが(原作でもそうでした)、吹き替えは最初の頃はしわがれた声…というか元からあの声なのであまり変わってないんですけど(^^;)、とにかく途中でしわがれ声の芝居をあっさりやめてしまいます。アレをやり続けるからこそ、ラストの病室でカーウィンが本性を表し本当の声で話す場面が生きてくるはずなんですけども。
 あとはセリフの翻訳もなんか…僕は英語なんてチンプンカンプンなんで実際のところはよくわかりませんが、ラストの方のカーウィンの言い回しなどはなんだか妙に説明臭かったり、無駄に迫力を出そうとしてわざわざオーバーな表現を選んでいるいるような感じなのです。
 まあたしかにキャラ自体が無茶なことを話しているはずなのでしかたがないといえばそうなのですが、もう少しシンプルなセリフにしても良かったのでは?
 あと、カーウィンがウォードを殺す理由が、吹き替えでは

「自分でも人肉を食いはしたが、あいつはそうした自分が許せなかった」

みたいなことを言っているけれども、これでは理由が通りません。復活して常に飢えに苛まれているというカーウィンが人間を襲うのには納得がいきますが、カーウィンを蘇らせただけで中身は普通の人間であるはずのウォードが、なぜ人肉を食わねばならないのか、謎です。
 その理由を説明するセリフも無し。どうにも納得がいきません。
 同じシーンを字幕では

「肉の処理の方法についてあいつとは意見の齟齬があった。かれの良心が咎めたのだろう」

というように訳しているので、人肉を食うカーウィンをウォードが止めようとしたので殺された…という意味が通ります。
 日本語訳を書かれた方は、聞いたままを翻訳されたのかもしれませんが、もう少し話の前後を考えて欲しかったですね。
 吹き替えを聞くのが楽しみだっただけに、今回は少しばかり残念でした。
 
 …などと結構辛口なことも書いたように思いますが、総じて大変満足度の高いソフトだといえます。
 クリアな映像に特典など、ビデオ購入から10年近く待った甲斐は十分にありました。
 ダン・オバノンのコメンタリーなどがついていれば最高でしたが、なにしろ故人ですしそこは仕方のないところですね。
 発売元の是空さん、販売元のハピネットさん、本当にありがとうございますm(_ _)m。

 この調子で「ヘルゴースト 悪魔のスケアクロウ」のBlu-rayも宜しくお願いしますw

 


 

関連記事
スポンサーサイト

管理者のみに表示する

トラックバックURL
→http://newbadtaste.blog.fc2.com/tb.php/1052-a4308021