2015-12-27 13:48 | カテゴリ:映画レビュー
「ブレーダーズ クライチカ」なるホラー映画をDVDで鑑賞。
この映画は1997年のカナダ映画で、その当時のタイトルは「ヘモグロビン」でした。
もしかして、こちらの方のタイトルに聞き覚えがある方のほうが多いかも。
DVDを発売する際に、ヘモグロビンでは閉まらないのでタイトルを変えたようです…まあ、原題は「ヘモグロビン」「ブレーダーズ」「子孫」という3つのものがあるようですが。



それはともかくこの映画、実はラヴクラフトの「潜み棲む恐怖」という小説を原作としています。
確か創元文庫の「ラヴクラフト全集」の5巻か6巻に収録されていたかと思いますが…しばらく読んでいないので忘れちゃったな。
で、おまけに脚本がダン・オバノン(ただし他の脚本家数名との共同執筆)、主演は北欧が産んだ怪優ルトガー・ハウアーというわけで、明らかにB級ホラー臭が香ばしいシロモノ。
そこにつられて今回鑑賞したというわけですが…。
うーん、Amazonなどのレビューでも評判はあまりよろしくなかったので(酷く貶める人も少ないようですが)、覚悟はしておりましたが…それでも見終わったあとにガクッと来るだけの物がある映画でした。

原作の「潜み棲む恐怖」は、ニューヨーク郊外にある保養地キャッツキル山脈に建つ古い館の廃墟を舞台にした奇怪な事件を描くもので、かいつまんでお話しますと、かつてオランダからアメリカに植民してきた貴族が、人里離れた山奥で何代にもわたって近親結婚を繰り返した結果、その子孫は奇形と退化により人食いの化け物になったという物語です。
原作者ラヴクラフトの家系は狂人が多い血筋で、彼の両親も精神病院へ入院しそこで狂死していますから、どうもラヴクラフトはいつか自分も発狂するのではないか?という密かな恐怖を持っていたようです。
その「血筋の恐怖」にアンモラルな近親相姦を風味づけして生まれたのがこの「潜み棲む恐怖」という作品なわけですね。
なおHPL作品の中で同じ血筋の恐怖をテーマに持つものは他にもありますが、なかでも「インスマスの影」が白眉だと思います。

そういう作品を原作に使用しているため、この映画も近親相姦と血筋にまつわる恐怖を描いています。
主人公は、原因不明の血友病を持つ青年で、自分のルーツがニューイングランド地方の孤島にあることを知り、血筋をたどれば病気の原因や治療法の手がかりが掴めるのではないかと期待して、島へやってきます。
その島で自分の一族について色々と調べていくうちに封印されていた記憶が徐々に思い出されてきて、それと並行するように島で謎の失踪事件が頻発する…というのがあらかたのストーリーです。
この青年が(一応ハンサムな顔なんだけどラヴクラフト並みに顔が長いw)自分の家系に迫っていくうちに「血脈の恐怖」が募っていき…となるのが正しいあり方だと思うのですが、そのあたりがなんとも中途半端な上に、説明や表現が不足しており、全然「恐怖」が募ってきません。
主人公は劇中、度々鼻血を吹いて倒れます。
いや、病人なんだからそりゃ倒れるだろうよ。
けれどもそこから伝わってくる恐怖はあくまでも「主人公の病気=死に対する恐怖」なんですよね。
死にたくないから治療法を求めてルーツを辿るわけで、それを描写するのが間違いだとはいえませんが、この映画の主題はなんだっけ、自分の中に潜む血筋の恐怖ですよね?
主人公には自分のルーツを辿って絶望したり、混乱したりしてもらわないといけないわけです。
ところがこの青年は、自分の一族がいるとわかると(当然怪物ですよ?)妙に興奮&感動し、ラストはなんと自らすすんでその仲間になる始末。
「彼は一族と再会出来たのだ」
とかいうナレーションまで入って驚愕の仲良しこよしエンド。

どこが血筋に潜む恐怖なんだ???

けっきょくは家族っていいな♡」っていうハートフルなテーマになってしまってるんですよね。
どこが原作でラヴクラフトが書きたかったこととあまりにも乖離しており、ガッカリしてため息しか出ませんでした(^^;)。
それに、「近親相姦」という、本来であればおぞましい行為であるはずのものを、美男美女の俳優を使って耽美的な描写で表現しているところもどうにもいけない。
美男美女を使うなということではなく、近親相姦を重ねた末の結果として、島で人を襲う怪物が生まれるわけですから、ここは美しく見せてはいけないところだと思うのですよね。

またご都合主義な展開がやたら目立ちます。
前にも書きましたが、主人公は血友病でやたらと倒れます。
「もうダメだ、僕は死ぬ」
とか二言目にはすぐ弱音を吐いて、看護婦の妻(金髪はきれいなんだけどイマイチな顔)に
「そういうこと言わないで!」
とか怒られます。
そんな今にもおっ死んじまいそうな虚弱な若者が、一族の者だという胎児の標本を食べると急に元気になって、
「身体が再生していくようだ」
とか言い出して、妻に挑みかかってバコバコファックするわ(このシーンは本当に必要だったのか?)、突いて歩いてた杖を放り投げて走りだすわの急回復ぶり。
一体何なの?
また、目の前で女性や子供が怪物にバタバタ殺されていくのにぽかんとして何もせず、最後は仲間になっちゃうんですから、呆れてものも言えませんや。
こういう主人公って一体何なんですかね、感情移入なんてとても出来ませんし。
いや、もしかしたらこの青年が主人公じゃなくて、ハウアー演じる島の医者のほうが主人公なのかもしれませんが…。

登場する怪物は前述のように近親相姦の果てに生まれた、異形の小人みたいな奴らなんですが、こいつらが全然強そうじゃない。
なんかピッケルみたいな武器を持って襲ってくるんですけど、足がないやつとかいたりして動きも遅いし、何しろ身体が小さいので大人が蹴っ飛ばしただけでも死にそう。
地下に張り巡らせたトンネルを通ってくるのだけが厄介ですが、こんなのに襲われても全然怖くないです。
あとは、こういう化け物みたいな見た目の連中の中で、なぜ主人公の青年だけが真人間として生まれてきたのか、とても不思議です。もちろん説明は一切ありません。

主人公の脇を固めるサブキャラたちも微妙。
秘密を知っているらしい車いすのババアは核心を離さないまま怪物に殺され、6歳の頃から声が出ないという女性は(プロレスラーのスティングに似ている)目の前で友人(へそ出しルックのブス)が化け物に殺されると怒りのあまり怪物をナイフで刺殺、
「もう許せない!」
とか叫ぶんですが、おお、しゃべれない奴が喋ったぞ!ここから大反撃が…と思ったら次の瞬間あっさり化け物に殺されるとか、一体何がしたいのかよくわからない演出もちらほらで、見終わってなんだかモヤモヤしたものが残ります。

そんな穴だらけで、きっと泉下のHPL御大も泣いているであろうトホホな映画ですが、良い点もちらほらあります。
まずは舞台となる孤島のうらぶれた雰囲気がいいです。
荒れた海と岩礁に取り巻かれ、強い海風が吹きすさぶ光景がいかにもホラー的でちょっとワクワクしました。
いかにも外国漁師の家的な小汚い建物とかもラヴクラフト的でいいですね。
また、この島は男がほとんど遠洋漁業の出稼ぎに出払っているという設定で、住民には女子供と年寄りしか残っていないというあたりも、弱っちい化け物の襲撃にも非力で組織的な反撃ができないという理由付けになっていて工夫が見られました。
あとは別け隔てなく子供も殺されるのがいいw
スピルバーグの「ジュラシックパーク」なんて、一番最初に恐竜に食われて当前のガキが、高圧電流かなんかの金網にあたってピクピク言ってるくせにいつまでも生き残ってて、何だこりゃガキ優遇してんじゃねえよとイライラしましたが、そういうことはこの映画に関しては、ないですw
化け物が弱そうと書きましたが、唯一好感をモテる点は、この化け物が人の食い方を知っているところですね。
よく、人食い人種とかのホラー映画ではナマニクにかぶりついたりしてますが、アレはおかしいです。
血抜きとかしないと肉なんて臭くて食べられないので、ゾンビとかじゃないかぎり、生肉を食べるにしても血抜きとか解体調理くらいはするはずです。
その点この化け物は殺した人の死体を逆さ吊りにして、手首の血管を切ってちゃんと血抜きしているんですよね。
そこのところが芸コマでなかなかよろしいかと思います。
また、ヒロインはイマイチな顔ですが、脇役で出てきたホテル兼葬儀屋の女の子が可憐な金髪ギャルで、ミニのワンピースの裾から覗くちょっと細めの足がとてもキレイでした。
どこか物憂げな響きの声もまた可愛らしいのですが、途中であっさり殺されちゃいます。
まあ墓荒らしをしに行った報い的な感じで描かれてますが、どうせならこの子をヒロインにすればいいのに…。

そんなわけでこの映画、多少見るべきものはあれども、全般的にはB級どころかC級に近い感じで、わざわざ買って見るようなものでもないような気がします。
主演を冠されているハウアーの行動は終始地味で、全然活躍しません。
彼の活躍が見たい方は「ブラインド・フューリー」を見ましょうw
この映画はゲオの50円レンタルセールとかの時に借りて、鼻くそでもほじりながら見るのが一番いい鑑賞法かもしれません。


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