2016-03-04 23:29 | カテゴリ:映画レビュー
さきほどまで、BS放送の7チャンネルで放送されていたジョン・ウェインの映画「マックQ」を見ていた。
この映画についての詳細はググっていただくとして、一言で言えば、現代のシアトルを舞台として、警察内部で起こった麻薬横流し事件に巻き込まれた主人公が、濡れ衣を晴らすために行動する姿を描くものである。

ジョン・ウェインといえば、説明するまでもなく往年の西部劇における名俳優・大スターとして有名だ。
もちろん本国アメリカは言うに及ばず、日本でも相当に有名な俳優なので、おそらく、皆さんも実際に彼がどんな映画に出ていたということは分からないまでも、どういう風貌の人なのかということは容易に連想できるのではないだろうか。
よくわかんないという人は、お父さん…つか、今の若い人たちにはお祖父ちゃんに当たるのかな、とにかくお祖父ちゃんや曾祖父ちゃんに訊いてご覧なさい。
多分、お目目をキラキラさせて子供時代や青春時代に見たステキな西部劇の話をしてくれると思いますよ。

閑話休題、とにかくウェインは写真なんかを見て分かる通り、、西部の荒くれ男というイメージをそのまま具現化したという感じの、ゴツくて、タフで、カッコいいオッサンです。
無論若い頃はオッサンではなかったわけですが、顔形がかなりオッサン臭いので、年寄りにしか見えないのだよなw
実際に西部劇映画でも青年などよりオッサンの役柄を務めるほうが多かったと思うし、またそれが合っていた。
ちなみに、ウェイン自身も西部劇をこよなく愛していたといわれる。
この点は後輩のクリント・イーストウッドなどとも同じだが、ウェインは西部開拓時代に生きていた古老や元ガンマンなどに綿密な聞き取り取材を行い、彼らが当時使っていた服装や拳銃の仕様、いろいろな生活道具などを再現し、自分の映画の中でごく自然に役柄に取り入れて使ってもいる。
時代考証家や小道具に任せっきりの日本の時代劇俳優(無論例外はあろうが)などよりも、随分熱心で真摯な向き合い方ではないか。
単純に、凄いもんだと僕などは思ってしまいます。
ちなみに、後輩のイーストウッドはさらに顕著で
「アメリカが世界に誇れるものは西部劇とジャズだけ」
という発言を常々してはばからないし、自身も拳銃のファストドロー(早抜き撃ち)の名人である。
ファストドローの地方大会での優勝経験も持っているほどなのだから、入れ混み具合はいささか常軌を逸していると言ってもいいだろう。

いずれ、西部劇というかつてスクリーンを席巻した人気ジャンルで名を成した俳優らしく、ウェインはいかにも「男臭い」ルックスと重厚な演技で人気を博した。
主演した西部劇映画なんて、名作、凡作の違いはあれども数えきれないほどだろう。
だが、西部劇ブームが過ぎ去った60~70年代になると、自身も歳を取り、人気も斜陽になったことから主役を張れるような大作の仕事もなくなり、演技に伸び悩んだ。
1974年制作のこの映画の時点では、非常にそれが顕著で、年齢的にもすでにロートルもいいところ。
驚く無かれ、ウェインは1907年生まれ、つまりこの映画の時点で70歳に近い老人である。
西部のタフガイもただのポンコツオヤジとなって当然な年代だ。
さすがに身長2米に近かったと言われる大男のウェインだけあって、劇中での佇まいには見ていて貫禄が十分にあり、したがって絵面に大きな存在感をもたらしているのは間違いないが、演技の方はどうかといえば、相変わらずの西部劇的な大味なので、あくまで現代劇であるこの映画では見ていて大変強い違和感を覚えてしまう。
この辺りは見ている方の「慣れ」にも影響される部分が大きいのだろうとは思うが、とにかく見ていて「なんかヘン」なのだ。

そして一番の問題点は、この映画のシナリオが「ダーティ・ハリー」の影響を非常に強く感じさせることだ。
悪には容赦無く暴力を振るうはみ出し刑事、部下や同僚にはそれなりの人望があるが上司からは嫌われている署内での構図、それに伴い組織からの援助が受けられない境遇、それがもうハリー。キャラハン刑事そっくり。
デジャヴ感を拭い切れないほどだ。

実はこれには訳があって、ダーティ・ハリーのシナリオは、最も始めにはウェインのところへ持ち込まれた企画だったのだ。
ところが、ウェインは当時仕事に困っていたのにもかかわらず、あくまで大物俳優の気分が抜けきらなかったためか、役柄に嫌悪感を感じ、話を蹴った。
そこで次にシナリオが持ち込まれたのが、同じように仕事がなくて困っていた「荒野の用心棒」や「ローハイド」のクリント・イーストウッドだった。
結果として映画は大当たりして、イーストウッドはスターの座に返り咲いたのだが、ウェインはこれを心底後悔し、また嫉妬したらしい。
それで安直な二番煎じに乗ってしまったわけである。
結果は…いかにも悲惨な映画となってしまったわけだが。

警察内部での麻薬の横流しやそれに関するゴタゴタという構図は、今の刑事ものドラマでは非常にお馴染みなのだが、そこは大物であるウェインの主演作であるので、西部劇的というか、あらゆる出来事が随分あっさりと描かれている。
なんというか、全体的にもったりまったりとう感じで、ハリーのほうにに出てきたスコーピオンみたいな凶悪無比のキチガイや、当時の社会現象や風刺などは一切なく、話が淡々と、まったく盛り上がらないまま進んでいく。
ラストは意外な犯人が出てくるかと思えばそうではなく、最初から目をつけていた麻薬マフィアが黒幕だったという(厳密には違いますが、そういう印象が強い)何のひねりもないオチなど、目も当てられない。
ウェインの歳がバレるもたもたしたアクションシーン、スピード感に書けるカーチェイス、西部劇風にあっさりとした銃撃戦、そしてなんだかふわふわしたBGMと、正直、見るべきものは殆ど無い。
これ、当たらなくて当然の映画だなと染み染み感じた。
いや、ここまでつまらないと思って映画も久しぶりだったので自分でも驚くほどだ。

今ではすっかり有名になったハリーの44マグナムに対抗するべく、ウェインが使う武器はイングラム「マック11」サブマシンガンなのだが、いまいちこの武器の凄まじさというものも表現しきれていない。
マック10の方なら45口径なのでそれなりに形も大きく、威力もかなりあるのだが、使うのは9ミリ口径の11の方なので、かばんに隠せるほどのちっぽけな大きさ。
それが2米の大男ウェイン爺さんの手に握られてご覧なさい。
もうおもちゃにしか見えませんよ(^^;)。
当時はマグナムなんてものが今ほど一般的ではなかったので、ハリーの44マグナムはすさまじいまでのインパクトがあったように思う。
それに対抗するには何か別の、強力無比な武器が必要だったのだろう。
それでイングラムに白羽の矢が立ったわけだが、それならもっと印象を強く与えるような見せ場がないとダメだろうに、そのシーンすらない。
銃砲店で試射するくらいじゃねえ。
しかもイングラムだけ使うのではなく、ウェインは普通に拳銃も併用して使うので、ハリーの44マグナムみたいな鮮烈な印象がないのだ。
使い方、見せ方によっては「すげぇ銃だ!」っていうところを十分観客に魅せつけられたんじゃないかと思うのだけれども…。

最後まで黙って見ていましたが、見終わったらなんかこう…悲しいというか切ないような気分にさせられる映画でした。
案の定、この映画を撮り終えた5年後の1979年にウェインは死去。
この映画は人生の最晩年に往年の大スターが咲かせた徒花だったのだろうか。

なんだかこき下ろしになってしまいましたが、西部劇ファンとしてウェイが好きなだけに、それだけがっかりしたということですね。
その意味では、ウェインのファンの方は見ないほうがいい映画だと思います。

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