2016-03-09 23:58 | カテゴリ:本の紹介
風邪で臥せっている間に、病床でハワードの「黒の碑」を読みました。



「蛮勇コナン」などの小説で有名な20世紀初頭の作家ロバート・E・ハワードが書いた作品です。
ハワードはほぼ同世代の小説家ラヴクラフトと親交があり、その関係からかクトゥルフ神話に類した怪奇短編や詩をを何作か書いていますが、この本はそれらを集めて収録した全13篇からなる短編集です。

感想の方ですが、Amazonのレビューには好意的なものが載せられておりますけれども、僕としてははっきり言って期待したほどではなかったというのが正直なところです。
もちろんハワードは実力のない作家などでは断じてないので(だとしたらコナンやキング・カルなどは現在まで生き残っていないでしょう)、つまらないということはないのですが、それでも面白いというわけでもない。
本当に微妙なのです。
思うに、ハワードはクトゥルフ系の怪奇小説には向かない作家だったのではないでしょうか。
文章は不慣れなクトゥルフ神話をラヴクラフトに倣おうとしてか、躊躇しつつ手探りで書き進めているかのような感があり、コナンに見られたようなのびのびとして、自由な筆勢がどうも感じられないのです。
物語も、事件が何の解決もなく主人公の自決や闇への逃避などで終わるラヴクラフトの陰鬱としたものとは異なり、人間が自力で解決してしまったりして(しかも意外にサラッと)、ラヴクラフトが描こうとした
「人間の力では及びの付かない、また人間の思考ではまったく理解できない宇宙的恐怖」
を描き出すには至っていません。

巻末の解説などには、表題作の「黒の碑」を最高峰だなどと褒めそやしていましたが、僕にはラヴクラフトの「クトゥルフの呼び声」の焼き直しにしか思えず、大いに興ざめでした。
ただ、それではこの本に収められているのはすべからくダメなものかといえば、そうではありません。
古代の戦士が巨大な蛆のような怪物に立ち向かう「妖蛆の谷」や、なんとあのコナンが登場する「闇の種族」などには、ハワードの持ち味である勇壮かつ豪快な筆致を垣間見ることが出来、筆者もノリにノッて書いていることが伺われます。
これらは単に冒険ファンタジー小説として面白い作品です。
また幽霊屋敷の怪を描く「獣の影」や、年を取らない不思議な老人に纏わる「老ガーフィールドの心臓」、スティーブン・キングが「20世紀最高の怪奇短編」と評した「鳩は地獄から来る」などは、普通に怪奇小説の古典として楽しめる出来になっています。

ただ、すべての作品について言えるのは、「クトゥルフ神話」としての出来の良し悪しこそあれども、決してつまらない小説というわけではないということです。
「クトゥルフ神話譚」と思って読むから違和感を感じるのであり、普通に「怪奇小説」だと思って読めばそうでもないということですね。
訳文のマズさもあっておそらく好き嫌いがはっきりと別れるため、クトゥルフファンにはちょっとおすすめはしかねますが、コナンのファンやハワードのファン、怪奇小説愛好家の方は抑えておいて間違いない一冊ではあるような気がします。

関連記事
スポンサーサイト

管理者のみに表示する

トラックバックURL
→http://newbadtaste.blog.fc2.com/tb.php/1110-36bcf74d