2015-08-10 17:54 | カテゴリ:怪奇
結局、おれと両親はその家に10年と少しほど住んだ。
訳あってその家を手放し、現在の家に引っ越してきたわけだが、その10年間の間に数えきれないほどの心霊体験をした。
最後の方はもう慣れっこになってしまって、怖くもなんともなかった。
それにテレビの心霊番組なんかでみるような、凄く劇的な体験というのも、あまりしていない。
だからこそ10年間も我慢出来たのかもしれない。

お盆が近いので、今頃に起こった話をしよう。
ある日の夕方、おれが一人で留守番をしていた時のこと。
玄関で声がした。
それは中年くらいの男性の声で、
「こんにちは!こんにちは!」
と二回呼ばれた。
来客かと思って部屋の外へ出て玄関を見ると、玄関の格子戸にハマったすりガラス越しに、カーキ色の服を着た男性の姿が写っていた。
すりガラスを通して見ているので、人相風体まではハッキリわからない。
とにかくカーキ色の服を着た男性だったのは確かだ。
はて誰だろうと思い、
「はい、今行きます」
と返事をして階段を降りている間に、その男性は玄関からいなくなっていた。
いなくなっていた、というよりも、消えたのだ。
玄関の前に立っていたシルエットが、真横にスーッとスライドするみたいにして消えたのを、おれはこの目で見た。
しかも、玄関から移動して敷地の外へ出るには(敷地の周りは塀で囲われているので、出入りは正門か裏門のどちらかを使うしかない)、玄関に隣接するように作られている居間の角を回らねばならず、したがって出入りすると居間のガラス窓から人の姿が見えるはずのだ。
ところがその影が見えない。裏門へ回ったのではないわけだ。
では正門へ行ったのかと思って玄関を開けてみたんだが、人はいない。
不思議だった、
ハッキリ声を聞き、姿も見たのだが。

その翌日の夕方、、暑いので開け放している縁側の戸を閉めに行って見ると、縁側の靴脱ぎ石…庭から縁側への上り口に置くあの石だが、その上に誰かが座っているのを見た。
こちらに背中を向け、うつむき加減で座っているのだが、カーキ色の服を着ている。
あれは軍服だなとピンときた。
帽子をかぶっていたかどうかは、今はもう思い出せないんだが、とにかく旧日本陸軍の軍服だったと思う。
昨日玄関に出たやつだなと思い、顔を拝ませてもらおうと足早に近づいた。
するとツイと立って庭を横切るような素振りをしたかと思ったら、消えてしまった。
パッと消えるというよりも、こちらの視界に何か別のもの、例えば柱とか、庭木とか、そういうものが入ってきたと同時に消えるという感じ。
雲か霞かとばかりに消えるわけではないのだった。ワンクッション置いて消えるようなイメージか。
この時は座敷の柱が視界に入ってから消えた。

もちろん驚いたけれども、これでおそらく軍人の幽霊だろうと見当がついたので、お盆のことでもあるし、無念の戦死を遂げた先祖の霊魂が帰ってきたのかも知れぬと、我が家系の先祖に軍隊に行って死んだものがいなかったかと思って調べてみると、いることはいたんだが、陸軍ではなくて海軍だった。
海軍の軍服はカーキ色ではなくて紺色なので、だれでも判別が付けられるだろう。
なので、おれが見たカーキ色の幽霊とは明らかに違うのだ。
すると、うちの先祖ではないということになる。
その霊魂が果たして何の目的で我が家に現れたのかはわからない。
多分供養を頼みに来たのだろうが、幽霊というのは本当に回りくどいことをするもんだなぁと思って苦笑いした。

(つづく)
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