2015-09-05 23:44 | カテゴリ:怪奇
久しぶりの続編です。
書きあぐねている間にお盆の怪奇シーズン(何だそりゃ)を大分過ぎましたし、書き始めてからいい加減1ヶ月になってしまいますので、そろそろ終わらせることにしましょう。
皆さんお付き合いありがとうございました。

先日は貞子みたいな女が部屋に入ってきたという話をしたが、供する話はそれに匹敵するほど、おれにとっては強烈な体験だ。
事件が起きたのはある夏のことだ。
盛岡では毎年8月の頭にさんさ踊りという大きな祭りが開催される。
その祭りに合わせて、長野で住職をしている伯父が家族を連れて遊びに来たことがあった。
さんさ踊りは夕方に始まるので、昼間は市内の観光へ使うことにして、おれの母親と伯父家族が街へ出て行った。
そのとき、おれはなんでか一緒には行かず、夕方一緒に食事を摂るという約束だけをして、夜の8時だったかに飲食店で待ち合わせることにして、ひとり家に残っていた。
その日も大変暑い日で、家の中でうだっていたが(クーラーの吹き出し口から凄い水漏れがしてほとんど使えない状態だったのだ。余談ながら、これは排水ホースにゴミが詰まるとなるそうだ。皆さんも掃除はマメにしましょう)、あまりに暑くて汗だくになってしまったため、シャワーをかぶろうと思い、二階の自室から一階の風呂場へ行った。
風呂場でシャワーをかぶってさっぱりし、まだ時間にはかなり余裕があったため、冷蔵庫から缶ビールなんぞ取り出して自室へ戻った。

異変が起きたのは、階段を登り始めてからだった。
その当時住んでいた家はとにかく広かったし、天井が高かったので、階段が急傾斜しないようにL字型に曲がっていて、一階と二階の中間地点、つまりL字の結合部分が踊り場になっていた。
その踊場まで上がったとき、階段の下から、おれのあとを駆け上がってくるように、ダダダダダッと足音がしたのだ。
本当に出し抜けのことで、おれは飛び上がるほど驚いて、手にしていたビール缶を落としてしまった。
今思い出しても、こればかりは鳥肌が立つほどだ。
もちろん、後ろを振り返っても誰もないない。
また出たか、と思ったら、踊り場へ立つおれの側を、何かがスッとすり抜けていく気配が、ありありとした。
狭い階段だったので左右は壁だし、人が二人すれ違えるほどの幅なんてもちろんなのだが、なんていうのかな…冷気みたいなものがソーっと通り抜けていった感じだ。
もう心臓がドキドキしてたまらず、さっさと部屋へ逃げ込もうと思ってビール缶を拾い、階段を上り始めようと踊り場から二階の方へ目を上げたとき、再びおれは本当に心臓が止まるかと思ったほど驚いてしまった。

二階の、階段の上がり口のところに、女が立っていた。

しかも脚だけの。


白い素足が、にゅっと二本立っているのだ。
こちらへ膝を向けて、脚はやや開き加減のようだった。
膝から上はない、というか見えない。
そんな状態でどうして「女の脚」だと思ったのか…それは自分でもわからない。
ただ間違いなく、女の脚だと感じたのだ。
この時になってようやく、左腕の幽霊センサー(前回参照)が働き始め、ついで全身に鳥肌が立った。
おれは思わずたじろいで腰砕けとなり、階段の手すりにしがみついてしまった。
そうしているうちに、脚は消えてしまった。
幽霊の消え方は何かに遮蔽された一瞬に消えることが多いようだと以前書いたけれども、その時ばかりは「パッ」と消えた。
本当におれの見ている前で、テレビのスイッチを消したみたいに消えた。

貞子が部屋に入ってきた時や、軍人の霊魂を見た時ですら大した恐怖感は感じなかったのだが(それよりも不思議だなという気分のほうが強かった)、この時ばかりは本当にショックだった。
怖くてたまらなかった。
階段を上る気には、とてもならなかった。
しかし上らないと部屋に入れない。
しばらくどうしようかその場で考えたが、とても考えがまとまらなかったので、とりあえず一階へ戻りダイニングに避難(?)して、観光に出ている母親に電話をかけることにした。
電話をかけると、母親は本人が霊感あるくせに直接見たわけでもないから気楽なもので、ああ、そうですか出ましたか、みたいな感じで相手にしてくれない。
伯父なんて住職しているくせに幽霊とか一切信じない人間だから、あんた昼間から酔っ払っとるのかね?とか言い出す始末だ。
すごく惨めな気分で電話を切り、しばらくダイニングでジリジリしていたが、いい加減パンツ1丁だと身体も冷えてくる気がしたので(暑さとか全然感じなかったのだが、身体は汗をかいていた。多分それほど神経が興奮していたのだろうと思う)、意を決して二階の自室へ戻ることにした。
おそるおそる階段へ行ってみると、もうなんの怪しいこともない。
なんとなくホッとしたが、やはりこの後何が起こるのかわからないので、一気に階段を走り登って部屋へ入り、バタンと扉を閉めた。
その後はとても一人で家にいる気になれなかったので、着替えをして外へ出て、待ち合わせの時間になるまで本屋へ行って立ち読みをしていた。
合流した後で、ああだこうだと尋ねられたがとても詳しく話す気も起こらないので、酒ばかり飲んでいて、その夜はかなり酩酊してしまった。

これが、おそらくその幽霊屋敷に住んでいた中で一番大きなショックを受けた経験だったろうと思う。
その後のことはいろいろ差し障りがあるので詳しくかかないが、ある時期、やたらと巫女さんであるとか、霊能力者であるとか、尼さんであるとか、そういう霊感を持っている人が家に訪ねてくるようになったという(本当に何の前触れもなく来た時もあるし、知人の紹介で来たこともある)奇妙な時期を迎えることになった。
無論その人達は、横のつながりがあったのではないまったく無関係な人が多かったが、皆口を揃えて言ったことがある。

「この家には霊道が通っており、その霊道が二階の(親父が寝ていた)寝室に通っている。霊感がある人はそこで霊魂を見ることがあるだろうし、霊感がない人でもそこで寝ていると体調を崩したり、夢にうなされることがあるはずだ」

「この座敷には(おれがその人達を接待していた場所で、以前人の話し声を聞いたりした場所)二人の霊魂がいるのが見える。1人は80歳位の背中の曲がった老婆で、座敷の真ん中に座っている。この霊魂は悪いものではないが、問題はもう一人の方だ。それは若い女で、髪が長くて白い服を着ている。これはあまり良くない霊魂だ。こちらは普段座敷にはいない。この家の裏庭にある物置の中に住んでいる。この女は家の方に入りたがっているが、座敷にこの老婆がいるので入って来られない。老婆の霊魂が何かのおりにいなくなることがあるが、その時に家の中に入ってくる。この老婆と女の霊魂に直接の血のつながりのようなものはないが、なにかしらの関係はあるはずだ」

「あなたには金色の毛をした狐が憑いているが、あなた自身の中にはお地蔵がさんがいる。そのお地蔵さんが、狐が完全に取り付くのを防いでくれている。そのお地蔵様のためにも、狐を祓い落とすことが肝要である(と行って、狐を落とすまじないというか儀式みたいなものを教えてくれた)」

だいたいそういう内容だった。
流石におれの中にお地蔵さんがいるとか金毛の狐が憑いてるとか言われた時は驚いたが、来た人たちが異口同音に同じことを言うので、きっと事実だったんだろう。
その後のことは、色々と面倒くさい事情も関わってくるから話すのは控えよう。
けれども、結局最後はおれたち一家はその家を引っ越すことになった。
前回も書いたのだが、その家に住んでいた1数年間、まったく不思議なことばかりが起こった。
あの家は本当に幽霊屋敷だったんだろうなぁといまだに思う。
そして今、その家には新しい住人が住んで生活しているはずである。
所用があり、時々近くを自動車で走ることがあるのだが、その家を見るたびに、今もあの家では怪奇な現象が起こっているのだろうかと、ふと考えることもある。
機会があれば、原住民の方といろいろと話をしてみたい…なんて思う部分もあったりするが、まあいらぬお世話というやつだろう。
現住人の方のご多幸を取ってつけたように祈りつつw、筆を置くことにする。

ご精読ありがとうございました。

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